地主さんの悩み

先日、地主さんを迎えての勉強会に参加してきました。

士業の方や不動産会社さん10数名の勉強会で、講師は10数代続く地主家の後継者の方(以下仮に「Kさん」とします。)でした。


Kさんは、30代になったばかりで、一族の資産管理をしている会社で仕事をしています。

お父様はまだまだお元気ですが、ご自身が資産管理を承継したのが年配になってからであり、その時の経験を生かして、ご子息に早い段階で資産管理を担ってほしいとの方針から、Kさんが実務に携わっています。

Kさんは、資産管理に携わってから1年半ほどですが、この期間、一部資産の売却や金融機関との条件交渉、税金面の対応など、資産保有に関する抜本的な対策を講じて、ようやく一段落したという状況とのこと。

この経験を通して感じたことを赤裸々にお話頂きました。


まず、一般の方から見て同じように見える大家さんにも大きく違う2つの類型があるというお話しがありました。

2つの類型とは『投資型大家』と『相続型大家』。

その名の通り、『投資型大家』は投資や資産運用の一環としてアパートをはじめとした不動産を保有している大家さん、『相続型大家』は一族または親御さんの保有していた不動産を相続した大家さんです。

2つの類型の違いは『所有の意思』とのこと。

『投資型大家』は、自ら所有の意思を持って不動産を保有する。
『相続型大家』は、相続により所有の意思とは関係なく不動産を保有している。


引き続いては、この2つの類型の違いにも関連した主に相続型大家の失敗についてのお話しでした。

ここでのキーワードは『能力的な限界』と『精神的なブレーキ』

『能力的な限界』について
入居希望者の情報収集手段についてインターネットが中心になり、極端な話ですがREITと個人大家さんが同じ土俵で勝負しなければいけない環境下で、知識・経験や、相談できる相手が限定される個人大家さんは、差別化が求められていると感じているとのこと。

『精神的なブレーキ』について
相続型大家でも、一族代々の資産を相続した大家さんは、先祖代々の土地を相続した、言い換えれば家からその不動産を借りているという思いが強く、不動産を減らしてはいけないという精神的なブレーキがかかるということでした。

また、一族の「意思」を間違ったカタチで相続してしまい、地域や環境が変わっているのに、それに合った対応ができないというブレーキもあるとのこと。

これらは、経済合理性とは別のベクトルなので、専門家や不動産会社が理路整然と提案をしても、当主の意識が変わる、あえて消極的な言い方をすると自分のなかでの言い訳ができないと受け入れることができないということになるのだと思います。

Kさんとお父様は、一緒に大家業に携わり、万が一結果的に間違った資産戦略を採ってしまった場合には、一緒にお墓に謝りに行こうと話をして、ようやく抜本的な対策に踏み切れたとのことでした。


最後に専門家に求めることは?と質問したところ、①各論よりも考え方を教えてもらうことで、大家さんとしても自身で考え、答えを出したいという気持ちがあること、一方②専門家各々の専門外のことは、他の専門家の方にも確認してくださいというスタンスを持つことで、大家さんとしても各専門家にアドバイスをもらい納得感を持って判断できるというコメントをもらいました。


大家さんは、やっかみを持たれやすい一方、その資産を付け狙われていることが多いため、ざっくばらんにお話しをお伺いできる機会は貴重なものでした。
ありがとうございました(^^)