市民後見人フォローアップ研修

先週の土・日は東京大学で市民後見人フォローアップ研修を受講してきました。

これは、東京大学市民後見人養成講座を修了した方々が、情報のアップデートと実務のスキルアップのために受講するもので、今回は、全住協が東京大学と共同研究をしている関係で、特別に受講させて頂きました。

内容としては、後見人制度のトレンドや法定後見・任意後見の特徴および実際の後見受任の事例などなど。


以下は私の感想です。


後見全体的に、親族後見から専門職後見へのシフトが顕著になっているようです。

理由を想像するに...被後見人資産の横領が取り沙汰されるのを目にする機会が多くなりましたが、特に親族後見のケースが多かったのかもしれません。

弁護士や司法書士の資格を持った専門職後見人の方が同じようなことをすると、メディアに取り上げられやすくなりますが、後見人制度発足当初は、後見人の9割が親族だったことを考慮すると、実は頻繁に横領が行われており、これを防ぐために裁判所が親族後見に慎重になっているのかもしれません。


法定後見に関しては、これまでも居住用不動産を処分する際には裁判所の許可が必要なことなど、厳しい制約が課されていましたが、近年導入された後見制度支援信託について、裁判所から、その活用を促される機会が増えているようです。

これは、法定後見人においては、1,000万円(現在は500万円)を超える流動資産については信託銀行に信託しなければならないというもので、当初は新規に受任する事案に適用されるものだった制度が、最近では過去に受任した事案についても、信託するか後見監督人をつけるかという選択を迫られているようです。

すっかり性悪説のアプローチになってしまっており、これでは被後見人のために良かれと思って受任した後見人にとっては、気分が良くないでしょうね。


一方、任意後見制度についても内包されているリスクが垣間見えます。

講義中に紹介された数字として、移行型の任意後見において、委任契約が6万件締結されたのに対し、後見に移行したのは3千件しかないとのこと。

本当に、ずっと後見が必要でない状態が続いているのであれば良いことなのですが、後見移行に伴い後見監督人が選任されるのを避けて、移行を先送りにしているケースがあるのであれば...。


いずれも、(あくまで)適正な監督機能が後見人をチェックし、後見人が被後見人のために誠実に後見を行うという、当たり前の関係を、制度を確立することが急務だと思います。


最後に、後見受任の事例として、被補助人の方の居住用不動産を、本人が暮らせるグループホームとして活用している例が紹介されました。

知的障害のある被補助人の方が大きな一軒家に暮らしていたのを、その建物を事業用定期借地権と合わせて社会福祉法人に譲渡し、その被補助人の方は、社会福祉法人が運営するグループホームに優先的に入居できる権利を持つという仕組みです。

これにより、その被補助人の方は、住み慣れた環境で、グループホーム世話人の方のケアを受けながら生活していくことができ、一方絶対的に不足している知的障害者の方を受け入れる施設ができたということで、非常に良い事例だったと思います。


これから、後見人になる方に、不動産・金融面のサポートをさせて頂くことによって、このような事例が少しでも出てくれば良いなと思います。